臓器別に見るがんの症状と検査方法

40歳以上なら毎年受けたい「がん検診」とその有効性

日本は先進国のなかにあって、最新の検査機器や治療技術を積極的に導入していますが、がん検診の受診率になるとワースト1位と不名誉な位置にあります。日本で若い女性に増加している子宮頸がんの検診を例に挙げると、アメリカでは8割以上が受けており、ワクチンとの予防効果もあって、既に「過去の病気」となりつつあるのに対し、日本での受診率は2割に過ぎません。

全身の病気を検診で調べる

がんは「早期」に治療を開始することができれば、根治が期待できますが、早期の時期はたいてい1〜2年程度に過ぎません。ほとんどのがんでは早期に症状は現れないため、痛みや出血などがあってからでは遅いと言えます。したがって、自覚症状が無くても定期的にがん検診を受けることが、早期の段階でがんを発見する唯一の手段となります。

市区町村で実施されているがん検診(大腸がん子宮頸がん乳がん肺がん、胃がん)は、検診を受けることで死亡率を低下させることが大規模調査で実証されており、費用の助成もあるため是非受けたいものです。大腸がん、子宮頸がん、乳がんは5歳刻みで特定の年齢の人に「無料クーポン券」の送付も行われていますので、活用しましょう。

多くのがんで早期なら9割が完治します。一方、がんが進行して、他の臓器に転移してしまうと、完治は難しくなり、治療にかかる費用も大きくなってしまいます。

がん検診の結果、「要精密検査」と判定されても、ただちにがんと結びつくわけではありません。乳がん検診を例に見てみると、受診者1万人当たり「異常あり」と判定されるのは750人程度ですが、精密検査で実際に乳がんと診断されるのは20人程度なのです。

他のがん検診と比較すると、子宮頸がん検診は受診年齢が20歳以上と低く設定されています。しかし、子宮頸がんの原因ウイルスであるHPV(ヒトパピローマウイルス)は、セックスの経験がある女性ならば誰でも感染リスクがあるため、性行為の低年齢化が進んでいる日本では20歳での受診が若すぎるということはありません。

子宮頸がんは自覚症状に乏しく、下腹部痛や不正出血などの症状が現れることにはがんが進行している可能性があります。子宮頸がんは早期発見できれば、子宮頚部の先端を切除する手術でほぼ100%完治し、妊娠・出産も可能ですので、子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。

全身のがんを1回の撮影で早期発見するPET検査が注目されています

全身に発生し、その種類も多い「癌(がん)」は、ほかの一般的な病気と異なり健康診断で発見することは容易ではありません。したがって早期発見、早期治療を行うためには各種の「がん検診」が欠かせません。がん検診の中心となるのはX線検査などの画像検査が中心となっています。

PET-CTの検査機器

しかし、健診の血液検査や便潜血検査などの結果からがんの兆候を見出すことも可能です。例えば胃がん、大腸がん、子宮がんなどのがんは出血により「貧血」が起こりやすいので、健診で貧血に関連のある項目、すなわち赤血球数ヘモグロビンの数値に大きく減少が現れた方はこれらのがんに注意が必要です。

また、がんによっては「便の色」に変化が現れることもあります。大腸がんは血便、胃がんや食道がんは黒い便、胆管がんでは白っぽい便が出ることがあります。さらにがんを発症すると、食欲不振にくわえて、がん細胞が大量のエネルギーを消費するため、体重が短期間で大きく減少することもあります。

そのほか、肺がんでは「咳が出る」「胸や背中が痛い」、食道がんでは「物が飲み込みにくい」、胃・肝臓・膵臓がんでは「上腹部の痛み」などの症状が現れます。健診で疑わしい兆候がみられたり、両親や親戚にがんを発症した人が多い家系のの人は、積極的にがん検診を受けるようにしましょう。

通常、がんはある程度の大きさになったり、自覚症状が現れない限り早期に発見することは難しい病気です。そんななか、全身のがんを早期にかつまとめて検査できる手法として注目されているのが、X線検査やCT検査と同じように放射線を用いるPET検査(陽電子放出断層撮影)です。

X線やCTによる撮影は、外部からX線を照射し、身体を通過した情報から画像を作ります。これに対して、体内に放射線薬剤を注射して、放出される放射線を撮影して画像化するのがPET検査に代表される核医学検査と呼ばれる手法です。

PET検査では、がん細胞がエネルギー源として取り込むブドウ糖に反応して放射能を出すFDGという検査薬剤を注射して、撮影を行います。ブドウ糖は通常の細胞もエネルギー源として利用しますが、がん細胞はその何倍もの量を必要とするため、放射線がたくさん放出されているところが、がんの病巣と疑わうことができるわけです。

PET検査の最大の利点は、脳、肺、胃、肝臓、膵臓、大腸など調べたい部位に範囲を絞って撮影するCTなどの画像検査と異なり、一度の撮影で全身のがんを調べることができるという点です。一般に、PET検査ではがんが1cm程度の大きさになれば発見できるとされており、特に甲状腺がんや大腸がんの早期発見に有効です。一方、早期の胃がん、肺がん、前立腺がんなどはPETは苦手としています。また、糖尿病の患者さんなど血糖値が高い場合は検査精度が落ちるので、PET検査ができないこともあります。

最近はPETとCTの双方の利点を組み合わせたPET-CT検査を導入する医療機関も徐々に増えて生きています。

放射線治療装置の技術進歩によりがんの根治を目指すことも可能に

従来の放射線治療は、がん細胞に対して2もしくは4方向から放射線を照射していましたが、この方法では目標とするがん細胞だけでなく、周辺の正常な細胞も殺してしまうことから2次がんの発生率が高まるという大きな欠点がありました。しかし、放射線治療装置の技術が大きく進歩した現在では、正常細胞へのダメージを極力抑えつつ、最大限の放射線をがん細胞に正確に照射することが可能となったため、がんを根治させることもできるようになりました。

治療の様子

以前の放射線治療では、放射線を照射する腫瘍の位置を皮膚の上からつけたマーカーによって2次元的に把握していましたが、正確な線量を照射できないという問題がありました。それを解決したのが、X線やCT画像などの画像情報を利用して、照射位置を3次元的にとらえることで、常に正しい位置に照射する「画像誘導放射線治療(IGRT)」です。

IGRTの登場によって可能となったのが、以下に説明する「定位放射線治療」と「強度変調放射線治療(IMRT)」です。

「定位放射線治療」は、通常よりも細かい位置決定を行い、病変の形状に合わせて多方向から集中的に放射線の照射を行う手法です。1回に照射する線量を従来より多くすること個で効果を高めており、商社回数も少なくて済むため、治療期間も短くなっており、患者さんの負担が軽減できます。主に脳腫瘍に対して行われてきましたが、近年は肺がん、肝臓がんなどにも応用されています。

「強度変調放射線治療(IMRT)」は、コンピュータで計算した治療計画に沿って、放射線量の調節を行いながら、収容に集中して放射線を照射する治療法です。上記の定位放射線治療に加えて、放射線1本1本の線量を細かく調節できるのが特徴です。前立腺や頭頸部のように、腫瘍の周囲に重要な臓器が密集しているときに、ターゲットとなる病巣にのみ十分な線量を当てたいときに重宝します。

これらのほかにも、肺や肝臓をはじめとした、呼吸などに酔て体内で動く臓器に発生した腫瘍に対して、時間の変化や動きのタイミングをコンピュータが計算して腫瘍だけを放射線で狙い撃ちする「4次元放射線治療」もあります。この手法には、呼吸波形が安定しているタイミングに合わせて照射する「呼吸同期照射」や、呼吸などによる病巣の移動を追尾して、位置を予測する「動体追尾照射」といった最新技術が応用されています。